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『Youth Ars Magna』は、12の器楽小品で構成されたインストゥルメンタル・アルバムです。一貫した物語を無理に紡ぐのではなく、日々の何気ない断片をひとつずつ拾い集めたような佇まいを持っています。明るい光を帯びた瞬間もあれば、静けさに沈む時間もあり、それらは必ずしも明確な因果で結ばれているわけではありませんが、確かに同じひとつの時間の流れを刻んでいます。
アルバムの前半は、全体として軽やかで穏やかな空気が流れます。アコースティックギターとピアノが奏でる肩の力の抜けたリズムは、風の通る午後や、傍らで猫が気ままに喉を鳴らすなか、ただぼんやりと腰掛けている時間を思わせます。曲が進むにつれて音の風景は次第に静まり返り、小雨に濡れる路地から、冬至の夜に冴えわたる冷たい月へと移ろっていきます。チェロが音のトーンを低く落ち着かせ、ピアノの鍵盤のあわいを時折古琴や竹笛がかすめていき、音と音のあいだにはより豊かな余白が残されていきます。
ここに収められた曲が描いているのは、ごくささやかな出来事ばかりです。天気の変化、過ぎ去っていく季節、ふと止んだ雨、そして何をするでもなく過ぎていった午後のひととき。若い頃には、それらが心に留めるほど特別なものだとはほとんど思わないものですが、後になって振り返ってみると、記憶のなかにいつまでも残り続けているのは、案外そうした目立たない瞬間の数々だったりします。
ラストを飾る「Geometry of Silence(静謐幾何)」に至ると、これまでの曲に散りばめられていた気配が静かにひとつへと収束していきます。アレンジはいっそうシンプルになり、穏やかな反復と「間(ま)」が音の空間を満たしていきます。ドラマチックなクライマックスを演出することなく、アルバム全体が静かで凪いだ空気のなかにそっと幕を下ろします。